峰岸の恋する宇宙-そら-(短編)
あの頃、あたしは峰岸が好きだった。


どうしようもないくらい、好きで好きで……。

大好きで……。



峰岸と同じ景色が見たくて、今を見たくて、未来を見たくて、宇宙を見たくて…ただ、峰岸と同じものを見る事しか考えてなくて…同じ時間を生きたくて……がむしゃらに背伸びしてた。


走って追い掛けて、でも峰岸の背中しか見えなくて、いくら手を伸ばしても…峰岸を掴む事は無いって……気付いたんだ。



あたしは子供だったから…好きって気持ちだけあれば……どこまでもどこまでも行けるって信じてる子供だったから……。



峰岸は、あたしにとっては、空だったんだよ。



高い高い、澄んだ空……掴めそうで、決して掴めない空…。


いくら跳んでも、梯子を使っても、届く事は無い。



空と大地……お互いを見る事はあっても、お互いの存在を知っていても…決して交わる事の無いその距離が、あたしと峰岸の…距離……。


ねぇ、峰岸……。


あたしにできたのは、峰岸が降らせた思い出の破片を、キャッチする事だけだった。



舞い落ちる桜の花びらを、掴む事だけだったよ。
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