峰岸の恋する宇宙-そら-(短編)
「一瞬、永山だってわからなかったよ、俺」

「…あたし…そんなに変わってないよ」

「そんな事ないよ。綺麗になってて驚いた。面影があったから気付いたけど」

「面影?」

「昔から永山、いつも何か一生懸命で、純粋なイメージがあったから。目がさ、綺麗だった」



………止めて、峰岸…。


…カクテルを持つ指が、震えてるんだ。


あたしは、純粋なんかじゃないよ。


違うよ、峰岸………。


峰岸を追い掛ける事しかできなかっただけだよ。


峰岸しか、見ていなかった。

周りなんか見てなかった。

見る余裕が無かった。


だから、予想外の峰岸の決断に、ついていけなかったんだ。

追い掛ける勇気が……無かった。

諦めた。


だから…違うんだよ、峰岸。


あたしは純粋じゃ、ない。

諦めたから、一生懸命でもない。

一生追い掛ける事に、懸命になれなかった。



諦めたんだよ?


峰岸を忘れようとしてたんだよ?







断ち切らなきゃ………。



そう、思った。



峰岸への想いを、完全に……二度と繋げない様に……。




断ち切るんだ。
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