峰岸の恋する宇宙-そら-(短編)
「よく考えたら、俺達いい大人だもんな」

永山に先越されたな、峰岸は笑って、笑って…言う。




苦しい………。


痛い………。



………震える。




おめでとうと言う峰岸に、うつむいたままでうなづく事しか……できない。

峰岸を直視できない。




「じゃあ……永山に返さなきゃな」



返す……?



コロナを一気に飲み干した峰岸が、カウンターに何か置いた。

うつむいたあたしの視線の先に、それを滑らせてくる。



「次は、永山の番だよ」

「………」






……桜の…………花びら…。




峰岸が返すと言った物は、桜の花びらのしおり……。


小さな花びらが綺麗にラミネートされた……手作りの………。

これ……これは……。






(峰岸くんの夢は何?)
(………宇宙飛行士)



満開の桜の木の下。

ピンクの雪みたいな花びら。


赤いランドセルを背負ったあたし。

黒いランドセルを背負った峰岸。


(どうか峰岸くんが、宇宙に行けます様に)


差し出したあたしの手を…花びらを…手を伸ばして受け取る峰岸…。


(ありがとう!永山さん)


満開の笑顔…。
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