峰岸の恋する宇宙-そら-(短編)
「俺、充分助けられてきたから……」



…峰岸………持ってたの?


だって…だって……十七年前だよ?

峰岸?



「だいぶ色褪せちゃったけど、永山に返さなきゃ」



峰岸………峰岸……。


「……どう……して」

「言ったろ?次は永山の番だって」

「あたしの………?」

そうだよと、峰岸は、笑った。




「俺、来年の春、宇宙に行くんだ」



…………宇宙に?



顔を上げた。

峰岸の、優しい笑顔。


「まだ内定だけど、確実。秋には世界に発表される」



宇宙……宇宙に……。

峰岸が宇宙に……。


峰岸の夢、全て……。



いつも空を見上げていた峰岸。

雲を抜けて、大気を抜けて、その向こうにある果てしない宇宙を峰岸は見てた。


昔から脇目も振らず、ただひたすらに、宇宙に恋い焦がれてた。



『想像するんだ。星を掴むみたいに、飛ぶ自分を想像するんだ』



飛ぶんだね?峰岸。

宇宙に向かって、飛ぶんだね?



ホントに……行くんだね。


峰岸には、宇宙に行ってほしいって思ってた。

夢だけを、追い掛けてほしいって。




なのに……この不安は、何?
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