峰岸の恋する宇宙-そら-(短編)
おかしいよ、あたし。


また、峰岸が遠くに行っちゃうなんて考えてる。



峰岸……。

……耳鳴りがするよ。

聞きたく…無い…。


あたし、何にも言えない……。



真っ白………。

頭の中が……真っ白……。



「永山が願い込めてくれたから、頑張ってこれたんだと思う」



峰岸……峰岸……。


「俺の夢は叶ったから、次は永山の番だ」


そう言った峰岸は、カウンターに置かれたしおりの上に手を重ねた。


峰岸の手……繋いで欲しいって願ってた…峰岸の手……。



「…どうか永山が、この先もずっと幸せであります様に」


…………峰岸!


しおりに置かれた峰岸の手が離れる。

「ありがとな、永山」


峰岸!



うつむいた視界の隅…峰岸が出て行くのが見えた。



何で…ありがとうなんて言うの?

あたし、峰岸に何にもしてないよ。

何もできなかったよ。


いつだって自分の事しか頭になくて、峰岸の決断を素直に受け入れる事ができなくて、応援してるフリして、勝手に…峰岸との連絡を途絶えさせた。


逃げた。


…峰岸。


ありがとうなんて…何もしてないのに……何にも…。
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