峰岸の恋する宇宙-そら-(短編)
秋、日本中のメディアが峰岸の宇宙行きをピックアップし始めた。


新聞には峰岸の写真が載って、テレビでも報道されて。


“若き日本人パイロット”
なんて見出し付けられて。


峰岸はすごいなって改めて感じた。


昔のあたしなら、また遠くなるなんて考えただろう。


今は、大丈夫。

峰岸。
あたし大丈夫だよ。



峰岸のインタビューを見たんだ。


テレビのインタビューで、峰岸は首から何かを下げていた。

訓練の合間のインタビュー、峰岸のTシャツの首から下がるそれは、桜の花びらのしおりだった。


インタビュアーからしおりを質問された峰岸は、笑って言ってた。


『これはお守りです。必ず帰るって約束した人の、大切な人からの願いが込められてます』




涙が……溢れた。



峰岸……。

また少し、近付いた。




あたしは、強くなれる。
峰岸の存在が、あたしを強くしてくれる。



大丈夫。


あたしは今、峰岸と同じ空を見上げてる。

宇宙を見てる。


もう怖くなんかないよ。
もう不安じゃないよ。


あたしはあたしのやるべき事をしながら、峰岸を待ってる。
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