峰岸の恋する宇宙-そら-(短編)
今は、素直に思える。
頑張ってね、峰岸。
峰岸なら大丈夫。
やり遂げて帰って来る。
あたしは、電車で20分くらい離れた街にある、大きな駅ビル内の店に就職した。
洋服販売員。
けっこう好きなんだ、この仕事。
仕事を始めた秋、慣れ始めた冬。
厚いコートの衿を立て直し、あたしは出勤する。
空は曇っていて、灰色と黒が混じり合う雲が、ゆっくりと低い上空を漂っている。
白い息を吐きながら、あたしは空を見上げた。
空へ吐き出した息は、黒い雲を背景に溶けるように消える。
「……あ」
あたしは立ち止まり、手の平を空に向けた。
「雪だ」
黒い雲から出てきたとは思えない真っ白い雪は、あたしの広げた手の平に落ちて、溶けた。
『ねぇ、永山は覚えてる?』
溶けていく雪の中、あたしの瞳に峰岸が映る。
黒いダッフルコート、グレーのマフラー。
まだ18歳の峰岸。
『学校に古い桜の木があったろ?』
覚えてるよ、峰岸。
手を握りしめ、あたしは再び空を見上げた。
峰岸、初雪が降ったよ?
もうすぐだね?
あと少しで、宇宙だね。
頑張ってね、峰岸。
峰岸なら大丈夫。
やり遂げて帰って来る。
あたしは、電車で20分くらい離れた街にある、大きな駅ビル内の店に就職した。
洋服販売員。
けっこう好きなんだ、この仕事。
仕事を始めた秋、慣れ始めた冬。
厚いコートの衿を立て直し、あたしは出勤する。
空は曇っていて、灰色と黒が混じり合う雲が、ゆっくりと低い上空を漂っている。
白い息を吐きながら、あたしは空を見上げた。
空へ吐き出した息は、黒い雲を背景に溶けるように消える。
「……あ」
あたしは立ち止まり、手の平を空に向けた。
「雪だ」
黒い雲から出てきたとは思えない真っ白い雪は、あたしの広げた手の平に落ちて、溶けた。
『ねぇ、永山は覚えてる?』
溶けていく雪の中、あたしの瞳に峰岸が映る。
黒いダッフルコート、グレーのマフラー。
まだ18歳の峰岸。
『学校に古い桜の木があったろ?』
覚えてるよ、峰岸。
手を握りしめ、あたしは再び空を見上げた。
峰岸、初雪が降ったよ?
もうすぐだね?
あと少しで、宇宙だね。