峰岸の恋する宇宙-そら-(短編)
「明日…だよね?打ち上げ…あ、時差があるから違う?」

『俺にとっては今日だよ。今日の午後3時。日本時間では朝の8時かな』


峰岸にとっては、今日なんだ……。



ドクン…心音が耳の奥で鳴る。

ドクン…ドクン……。


受話器からもれるんじゃないかってくらい、だんだん早くなる…心音。



今日、なんだ。

今日、峰岸は宇宙へ行く。




どうしたんだろう。



今日だって聞いた途端、不安がわき上がる。


大丈夫だって、ずっと思ってたはずなのに。




違う……。

峰岸の声を聞いたからだ。


峰岸の声が懐かしくて、愛おしくて、あまりにも優しいから……あたしの強がりを簡単に崩してしまうんだ。




峰岸、峰岸…。


とうとう行くんだね。



夢だった宇宙に。



伸ばしていた手が、やっと夢を掴むんだね。



峰岸…………。



峰岸、峰岸。




今、そばに、行きたいよ。



『永山?泣いてないよね?』

「泣いてないよ」


ならいいけど、って峰岸の声を聞きながら、受話器を持つ手に力が入る。



ごめん、峰岸。


ホントは泣きそう……。
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