クロッカス

今から6年前

あたしは
この街に引っ越してきた



まだ小学校3年の頃だった



『お母さん、早く行こう!』

今日はあたしの転校日
不安半分、楽しみ半分で
あたしの気分は高まっていた

初日ということで
お母さんが
学校まで送ってくれるのだ

いちばん気に入っていた
ワンピースを着て
ランドセルを背負ったまま
あたしは玄関に立ち尽くしてる

『おかあさーんっ』

待ちきれなくてもう一度呼ぶと
お母さんは少し苛立った顔で

『分かった分かった』

とやってきた
その後から着いてきたのは
お父さん

『一緒に行こうか?』
お父さんは不安げに
お母さんに聞いた
『大丈夫よ。
あなた仕事でしょ?』

お母さんはきっぱりと
靴を履きながら答える


『じゃ、いってきます』
お母さんはお父さんに言う
『いってきま~す!』
続いてあたしも元気に言った


『あぁ、気をつけてな』

お父さんは
不安げな表情の上に
優しい笑顔を浮かべて
そう言った


『うん!』



今日はあたしの
転校日
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