あなたに映る花
半刻後。
「凛…これはいったい…」
「外に出るのに小袿着てってどうすんですか」
私は兄上の着物を着せられていた。
兄、といっても背丈は私と同じ位だから、大きさも女の体型を隠すのにはちょうどいい大きさ。
髪は男子の様に高く結い上げられ、顔には少し化粧までされた。
「外には色んな人がいるんです。そんなとこへ世間知らずなお姫様がひょいひょい行ったりしたら、身ぐるみも貞操も全部持ってかれます」
「……要するに、女一人は危険だってことですか?」
そう問うと、凛は当たり前でしょ、という顔で頷いた。
「男装してれば少しは危険が減ります。どうせ素敵な男性とお会いになるんでしょうから、その人と合流したら後は守ってもらって下さい」
…でも、それでは斎藤様にご迷惑が――って、え?
「なんで私があの方に会いに行くことを知ってるんですか!?」
びっくりして凛を見ると、その瞳が悪戯っぽく閃いた。
「そりゃわかりますよ。だって……」
次の一言で、たちまち私の顔は熱くなる。
「今の姫様には、ちょっと気になる男性がいらっしゃるようですから」