あなたに映る花
「あ…あの方は……」
私が好きでも……
「私を…子供扱いなさいます……」
込み上げそうになる涙を、ぐっと我慢する。
すっかり弱気になった私に、凛が追い討ちをかける。
「姫様は男も世間も知らないから、余計幼く見えちゃうんです。その方を見た時だって、男性だとわからなかったんでしょ?」
「そ、それは…」
あの方が、あまりにもお美しかったからです。
そう呟くと、凛は呆れたように言った。
「……なるほど。つまり姫様は別に恋をしたわけじゃないんですね」
「え…」
……どういうことだろう?
すっかり斎藤様に恋焦がれているつもりだった。が、凛は首を左右に振る。
「見てくれだけで好きになるなんて嘘っぱちです。男は中身が八割、顔が二割です。恋をするなら、顔より中身――つまり性格とかがいい人としてください」
「…凛は、恋をしたことがあるのですか?」
私がそう問い掛けると、凛は明るく笑った。
「姫様や私くらいの年頃の娘なら、誰だって恋をするものです。…ま、姫様の場合、そう時間もかからずに嫁ぎ先も決まるでしょうし、あまり深入りはなさらないほうが後で苦しい思いをしないですむんじゃないですか?」