あなたに映る花
その何気ない一言は、自分でも意外なくらい私の心に突き刺さった。
「……やっぱり、凛も知ってるんですか…縁談のこと……」
「………は?」
沈んだ声で呟くと、凛が素っ頓狂な声を出した。
「え?縁談って、姫様まさか本当に結婚するんですか?」
「したくないです」
すん、と鼻を鳴らすと、凛はきまりが悪そうに眉を下げる。
「…すみません。知らなかったんです。旦那様は姫様のことを大事にしてらっしゃるから…」
凛があまりにも落ち込むものだから、私はつい模範な考えを口走ってしまう。
「し、仕方のないことです。大名の姫は位の高い家に嫁ぎ、一族に繁栄をもたらすのが仕事ですから……。お相手の橘様だって……」
「橘!?」
つい告げてしまった縁談相手の名に、何故か凛が過剰反応する。
「橘のご子息って、姫様より二十三も年上じゃないですか!!」
「でも、あちらは私を受け入れて下さるって…。思慮の浅い娘を、受け入れて下さるのよ?」
私は思ったままを告げたつもりだったのだけど、凛は畳をバンと叩いた。