あなたに映る花
「なに言ってるんですか!うら若き姫様が、相応の歳の素敵な殿方との恋も許されず、中年男のいいようにされるなんて私は許せません!」
「り、凛。駄目です、そんな風にひとのことを侮辱するなど…」
息もつかぬ勢いでまくし立てる凛を宥めようとしたけれど、それが火に油を注いでしまった。
「大体姫様も姫様です!そんな縁談、さっさと断って下さい!」
「で、でも……私は別に強く思う方がいるわけでは……」
一瞬斎藤様の顔が頭を掠めるけど、さっき凛に言われたことを思いだし、心にしまう。
だけど凛は、さっきとはうってかわった真逆のことを言った。
「わかりました!では、姫様には嫌が応でも恋をしていただきます!」
「え、ええっ!?」
「幸い気になる殿方もいるようですし?」
そう悪戯っぽく言うと、ガシッと私の腕を掴んだ。
「え?ちょ――凛!どこに行くんですか?」
「屋敷の裏から外へ出して差し上げます!」
……さっきまで私が外に出るのに反対だったのに。
急に態度が変わった凛を訝しく思い、じっと見つめる。
すると凛は、こっちを見てニヤッと笑った。
「姫様の恋、この凛がお手伝いさせていただきます!!」
――…そうして私は、裏口からあっさり外に出されたのだった。