あなたに映る花


――ここは、どこ?

江戸の大通りの真ん中に佇んだまま、私は呆然と周りを見回した。

どこに目を向けても、人、人、人人人。

ちょっと不安になり、出掛けに凛に押し付けられた小太刀の柄を左手でギュッと握る。



あの桜の木の下に行った。

だけど、そこに斎藤様はいなくて…

でも、折角外に出られたのだし、もしかしたら斎藤様に会えるかもしれない。

そう思って大通りに来てみたはいいけど…。
                       
知らない人。
知らない店。
知らない町。

父上の仮の屋敷だって、江戸城下町近くにあるはずなのに…知らない事が多すぎる。

途方にくれ、広い道をさまよう。
            
ふと目を上げると、可愛らしい小物の店があった。

少し覗いてみようと走り出した、その時――


「オイ、女!ぶつかってんじゃねえよ!」

不意にどら声が響いた。


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