あなたに映る花
「やめてください!」
娘の細腕を掴んだ大きな手を、私は必死で剥がそうとした。
「あ゙ぁ!?離せ!!」
強い力で娘もろとも振り払われる。
私は、なんとか彼女を受け止めた。
「大丈夫、ですか?」
娘の肩に手を置くと、彼女は怯えたように私を見た。
大きく見開かれた瞳から沸いた涙が溢れ出す。
――許せない。
立ち上がり、仁王立ちしている男に向き直る。
彼は、私を見て下卑た笑いを浮かべた。
「ハッ!変なのが張り付いたと思ったら、侍気取りのガキじゃねえか!」
一歩歩み寄ってくる。
後ずさりそうになるのを必死に堪えた。
何も返さず睨みつけると、男は赤らんだ顔をぐっと近づけてくる。
酒臭い息が顔に掛かった。
「そこをどけ!俺ぁそのアマに用があんだよ!」
「ど、どきません!」
恐怖と怯えを必死で押さえて叫ぶ。
すると何故か、男の表情が楽しむようなそれに変わった。