あなたに映る花
「……てめぇ、女みてえなくせして強気じゃねえか。そんなに他人を庇って何が楽しい?」
まともに話し出した声は挑発じみていたけど、男の目に興味の色が宿っている。
私はそれを見据え、言葉を選びながら答えた。
「…もし、わた…俺が彼女を庇わなかったら、彼女は無事では済まなかった。だから庇っただけです」
私の答えを、男は鼻で笑った。
そして、私の顎に手をかけ、ぐっと持ち上げられる。
「威勢のいい小僧だ。……そんなてめぇに、ひとつ相談だがよ」
「…な、なんですか」
気圧されそうな心を叱咤しながら改めて男を睨む。
「そのアマを助けたかったら、てめぇが俺とこい。…いや、てめぇが来なけりゃ、そのアマ殺してやるよ」
どうだ?と尋ねてくる男の目に好色が宿る。
そのなめるような視線に鳥肌が立った。
「お、俺は男ですよ?」
「フン。そんなこたぁどうでもいいんだよ。てめぇは俺のもんだ」
予想だにしなかった返答に私の頭からは駆け引きも逃亡策も全部飛んでいき、叫んでしまった。
「嫌です!」
自分でもびっくりするくらい大きな声に、男の顔が歪む。
「この野郎、言わせておけば――!」
男が拳を振り上げ――
「っ――!」