あなたに映る花
「やめろ」
――パシッ
私を大きな影が覆った。
恐る恐る目を開けると、目に入ったのは見覚えのある浅葱の着物と長い黒髪。
彼は、男の腕を捕らえていた。
「白昼堂々と口説いてんじゃねえよ。人の趣味に口出すつもりはねえが、騒ぎにならないようにやったらどうだ。しつこい男は嫌われるぜ?」
こっちからは顔が見えないけれど、多分あの鋭い眼差しで相手を射抜いているのだろう。
からかっているのに少しも笑いが含まれていない声。
男が忌ま忌ましげに彼を睨みつけた。
「邪魔すんじゃねぇ!」
掴まれた手を振りほどこうとしても、びくともしない。
苛立った男は、彼につかみ掛かろうとした。
「あ、あぶな――!」
「―動くな」
――ピタリと男の喉元に刃が当てられた。
いつのまにか彼の隣に佇んでいたのは、夕日色の髪をした線の細い人。