あなたに映る花
唐突な事に動けないでいると、誰かにぐいっと腕を引っ張られた。
「そこは危ないから、こっちにいて」
そう囁くのは、栗色の髪をした大きな瞳の男性。
彼は私にニコッと笑いかけ、ボソッと言葉を漏らす。
「大丈夫。…僕らは弓鶴君の仲間だから」
知った名を聞き、私の中の予想は確信に変わった。
「やっぱり、斎藤様だったんですか……」
ホッと安堵すると、彼は珍しいものを見るようにじっと見つめてくる。
「?どうかしましたか?」
「…いや…あの人見て安心するなんて、珍しい子もいるなって思って」
わけがわからず小首を傾げるけど、その人は笑みを深めただけで何も教えてくれなかった。
少し不満だったけど、不意に聞こえたしゃくりあげる声に、もうひとりいたことを思い出す。
私は、地面にへたりこんでいる町娘の前に膝をついた。
「…落ち着いて下さい」
そっと彼女の手をとる。
あまりの恐怖に冷たくなっていて、少しでも温まるようにそっとさすると、彼女は私を濡れた瞳で見上げた。
「大丈夫です。恐かったら、わた…じゃなくて、俺の手を握っていてください」
そっと声をかけ、再び彼らの方を向く。
自分達より巨体な男を取り囲んでいる三人を見て野次馬がざわめく。
「…こりゃ…」
「…気の毒に…」
哀れむような声と彼らに向けられる視線に、私は不安に駆られながらも、彼らを見守ることにした。