あなたに映る花
「は、離せぇ!」
男は突き付けられた刃に動揺しながらも、黒髪の人―斎藤様に向かって凄む。
けれど、斎藤様は呆れたようなため息をひとつして男に問い掛けた。
「あのなあ。…昼間っから酒呑むのは勝手だが、嫌がる女やガキに被害が及ぶのは困るんだよ。俺達だって今日は野暮用があったんだ」
そして、赤毛の人に声をかける。
「…お前も、突然刀抜くなって。しまえ、夕霧(ゆうぎり)」
「…承知」
斎藤様の言葉に、赤毛の男性…夕霧様は、刀を収めた。
そんな様子をじっと見ていた栗毛の方は、楽しそうに喉を鳴らす。
「弓鶴君も暁野(きょうの)君も、まるで緊張感がないねぇ」
「…おめーに言われたかねえよ間宮。笑ってねえで参加しろ」
斎藤様が軽く睨みながら言うと、間宮様は苦笑しながら両手を上げる。
「ハイハイ。相変わらず人使いが荒いですね、町方与力」
…与力?
斎藤様は町方与力(今でいう警察の警察署長)なの?
ということは、他のお二方は…同心(今でいう巡査)なのだろうか。