あなたに映る花

――…よく知らないけれど、町方与力や同心は町の治安を守るお役目のはず。

でも…

周りの人達を見る。

彼らが斎藤様達に向ける視線は、好意的とは言い難いものだった。

……なぜ、あんなに疎ましい表情をするのだろう。

私は彼らに軽い不快感を覚えながらも、斎藤様達に視線を戻した。

斎藤様がため息をつく。

「間宮……」

「ねぇ、今は僕に説教するより、この状況をなんとかしようよ。僕達だって暇じゃないんだから」

飄々とした間宮様の態度に、斎藤様は「チッ」と舌打ちする。

「…減らず口叩きやがって」

そう呟く斎藤様の背後に――



「……斎藤様!危ない!」



――男の拳が迫っていた。

夕霧様は突然の動きに反応できず。

間宮様は止めもせずにただ男を眺める。


男が無防備な斎藤様の後頭部めがけ、右手を霞むほどの速さで振り下ろす――!


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