あなたに映る花
斎藤様が剣呑な顔つきで女性を見る。
女性はその視線に体を揺らすけど、負けじと見返した。
「あ、あんた達に罪もない子を渡すなんて、この子がどうされるか分かったもんじゃないよ!」
そう言い放つと、女性は私の手を引く。
だけど斎藤様も離さない。
「は、離しな!」
「出来ねえな」
……ラチがあかない。
私は、女性に向き直る。
「わた、じゃなくて俺なら大丈夫ですから…。離して下さい」
私の言葉に虚を突かれたような顔をした女性は、慌てたように私の手を引く。
「な、何言ってるんだい!この連中について行くなんて、正気の沙汰じゃない!」
尚も離そうとしない女性に、夕霧様がゆっくりと近づく。
「……俺達は別に何かをする気はない。今は非番だ。これはあくまでも個人的な付き合いであり、決して罪を問うわけではない。……そうだな、景」
な、名前知ってたの…?
そのことに驚きながらも、私は必死に頷いた。
「は、はい、そうです!なので、心配しないで下さい!」
とびっきりの笑顔で言うと、女性は渋々ながらも手を離してくれた。
「…そうかい。だけど、なにかされたらすぐ逃げるんだよ?」
そう言い残して去っていく。