あなたに映る花

彼らが倒れる寸前、景くんはすばやく抜け出すと、あっという間にマナ先輩を羽交い締めにしている男の後ろに回り、喉元に手を当てた。

「彼女を離して下さい。でなければ力づくで引きはがします」

男はヒッ、と声を上げ、マナ先輩を離した。

景くんは、あたし達の方をゆっくりと向く。

その目つきは、さっきのそれとはまるで別だった。

「―離して下さい」

男達は、何も言わずに手を速攻で離した。

よろけたあたしを、拓真と良太が支えてくれる。

「大丈夫かよ佑」
「う…うん…」

そしてあたし達は、景くんを見る。彼の目は、真っ直ぐに田沢を捕らえていた。

「出ていって下さい」
「お、落ち着いて…」
「今、直ぐに!」

景くんの気迫に呑まれたのか、田沢は顔を引き攣らせたまま後ずさり、やがて走り去った。


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