あなたに映る花

斎藤様の眉間にしわが寄る。

「町人どもには人斬り狂いだと思われてるから、さっきの町娘も女も、俺達を恐れ軽蔑した態度をとったんだよ」

――顔から血の気が退くのが分かった。

間宮様が苦笑いしながら覗いてくる。

「…分かった?僕達がどういう存在か。弓鶴君を見て安心したり、普通に話す君がどんなに異質か。君が弓鶴君をどんな風に捉えてるのか知らないけど、恐いって思うなら、もう関わらないほうがいいよ」

優しげだけど冷たい言葉。

押し潰されそうで、でも私は必死に言葉を紡いだ。

「…恐くないなんて、思いません。人の命を奪うのを、良いとも思いません」

私の答えに、間宮様がため息をついた。

「そう。じゃ――「でもっ!」

私は顔を上げ、間宮様を、夕霧様を、そして斎藤様を見た。

「恐いからって逃げてしまえば、私は後悔します!皆さんは、恐いけど、でも悪人ではないです!私は……」

ぐっと手に力を込め、自分を鼓舞する。

「あの日の後、斎藤様に会える隙をずっとうかがってきました。屋敷の警護は厳しいし、結局勝手に兄上の袴を借りてしまったし…。でも、もう一度会いたかったんです!私の知らない世界の人と、話がしたかったんです……」


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