あなたに映る花

「…あつ…」

町中には活気が溢れ、生き生きとした声が飛び交う。

そんな中、皆が若干遠巻きにしている三人組が目に入った。

その中の一人、間宮様がこちらを振り返り、手を振ってくれる。

「景ちゃん!」

間宮様につられてこちらを振り向く夕霧様と――

「……っ」

――いけない。

決めたんだから。

斎藤様と一緒にいるときは、笑っていようって。


「よう、景」

「お久しぶりです、弓鶴様」

いつものように交わされる挨拶。

だけど……何か違和感。

「……弓鶴様。どうして不機嫌なんですか?」

彼の顔にいつもの笑みはなく、張り付いているのは憮然とした表情。

不機嫌さ丸出しの声音。

……一体何があったのだろうか。

すると弓鶴様は、表情を崩さずに私の手を握った。

不意打ちに顔が熱くなる。

「……こい」

「ええ!?」

後ろから「あーあ。可哀相に」という間宮様の呟きが聞こえた。


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