あなたに映る花

聞いたことのない単語が飛び交う。

私は隣にいた夕霧様に意味を聞いてみた。

「あ、あの…」

「?なんだ?」

「『ザル』とか『ワク』ってなんですか?」

そう問うと、彼は拍子抜けしたように目をしばたたかせた。

「…本当に知らんのか」

「す、すみません…」

なんとなく申し訳なくなって頭を下げると、夕霧様は困惑した顔をする。

「い、いや、お前が悪いわけではない。俺の方こそ、失礼なことを言った」

そして、咳ばらいをすると説明してくれる。

「ザルというのは、水をかけても通してしまうだろう。いくら水をいれたところで溜まることはない。要は、いくら呑んでも酒気が溜まらず酔わないということだ。ワクは木枠のことだ。ただの輪に水は溜まらん。底無しとも言える」

…つまり。

「お三方とも、お酒に強いんですか…」

「そういうことだろう。俺はともかく、斎藤さんは半端じゃないくらい強い……そろそろ止めるか」

そう呟くと二人の間に割って入る。

「そろそろ止めたらどうだ和陽。斎藤さんも落ち着いて下さい」


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