あなたに映る花
困惑した表情の弓鶴様に俯いていると、店の外にいた間宮様が待ち兼ねて戻ってきた。
「何やってんのさ。――って、どうしたの二人とも」
間宮様は沈む私と眉を寄せる弓鶴様を交互に見る。
ふと、弓鶴様の手にある簪に目を止めると、途端に合点がいったように声を上げた。
「……ああ、そういうこと」
そして、私の肩に手を置くと、優しく声を掛けてくれる。
「大丈夫だよ。その振り袖も簪も朝の不機嫌な仏頂面も、弓鶴君のヤキモチだから」
「…ヤ、ヤキモチ?」
私がおうむ返しをすると、何故か間宮様は唐突に弓鶴様の懐に手を突っ込んだ。
覚醒した弓鶴様は引きはがそうとする。
「間宮ッてめ――!」
「あったあった」
抵抗も虚しく、やがて間宮様は一通の文を取り出した。
表には……『斎藤弓鶴様』と几帳面な字で書かれている。
「…恋文、ですか…」
発する声の低さに自分で驚きながらも、どんどん心が沈んで行くのがわかった。
けれど間宮様は、容赦なしにその中から文書を取り出す。
「読んであげる」
……今だけ、間宮様を怨みたかった。