あなたに映る花
『斎藤様。先日は成り行きとはいえありがとうございました』
…。
「容姿端麗な弓鶴様を女性がほっとくわけがないですよね…」
じっと床を睨みつける。
「お、おい」
弓鶴様が何か言おうとするけど、それを遮るように間宮様が続けた。
『恐ろしいこととは思いましたが、文を送らせていただきました』
皆が恐れる弓鶴様に勇気を振り絞って文を出すなんて…
「余程思いが強いのですね…」
「いや、だから…」
『どうしても、一目お会いしたいのです。お慕いしています』
…どうして、こんなに胸が苦しくなるんだろう。
「………っ」
「間宮、やめろ…………………景?」
弓鶴様は、様子のおかしい私を訝しげに見た。
……何故貴方は、そんなに平気な顔をしているの?
視界が歪む。
目に溜まった雫越しに、弓鶴様の驚いた顔が映った。
……そんなの、当たり前。
私は弓鶴様と恋仲でもなんでもない。
なのに、なんで私は泣いているんだろう。
「……くそっ――」
弓鶴様の顔も歪んだように見えたのは、気のせいだろうか。
「―――!?」