あなたに映る花
「……あの」
「間宮。読め」
命令調で発せられる言葉。
「仕方ないなあ。弓鶴君は変なところで我が儘なんだから」
「うるせえ。さっさとしろ」
「はいはい」
まるで子供をあやすみたいな口調で答えた間宮様は、再び文に目を戻した。
『あの時、酔いどれに絡まれ、貴方がたの出現にも臆せずずっと私の手を握って下さっていたこと、忘れてはおりません』
……
…………
…………………
え?
『力の抜けてよろめく私を支えて下さった優しい腕…私はあのように殿方に触れられたのは初めてです』
……殿方?
『そして、最後に見せて下さった美しい笑み…目を閉じれば直ぐに浮かんで参ります』
……
『どうかこの気持ちを、あの鳶色の瞳の方に伝えてはいただけないでしょうか。そして、叶うならば今一度お会いしとうございます。どうぞ、よろしくお願いいたします』