あなたに映る花
「はっ、離れたく、ないのに…離れなきゃ、いけない…」
涙が溢れて止まらない…。
「橘、様のところに、嫁いだら、会えなく、なる…」
嗚咽が止まらなくて、言葉が切れる。
「怖い、恐い、いや、嫌!」
どんなにこの気持ちを抑えようとしても、私の中じゃ収まらなくて。
「……っ、ふ、うっ…」
言葉じゃ、伝わらなくて。
弓鶴様が、遠く見えて。
手を伸ばせば届く距離がもどかしくて。
弓鶴様に触りたくて。
手を、伸ばした。
「……景」
弓鶴様は、伸ばした手を掴んで引く。
空間が小さくなって、弓鶴様が驚くくらい近くにいた。
弓鶴様は、右手を私の頬に添えたまま、左手指で顎を捕らえた。
目の前に、弓鶴様の真っ直ぐな瞳しか見えない。