あなたに映る花
「俺と離れるのは、いやか?」
「は、い…」
「橘って奴に嫁ぐのが嫌なのは、相手が知らない人間だからか」
「わかりま、せん…」
「…もし、それが間宮とか夕霧だったら、嫁ぐか?」
「…そしたら、弓鶴様と会えませんか…?」
「…そうだな。会えねえ」
「じゃあ、やです…」
「だったら――」
「俺にこうやって抱きしめられんのは…嫌か?」
「嫌、じゃない…です」
「離して欲しいか?」
「や…」
「俺がお前を見つめると…体が、熱くなるか?」
「…っ、はい…」
「こうして、お前の頬を触って、お前に触れて、このまま、全部俺に触られたら…嫌、か?」
「…今、耳に触れられると、耳が熱くなりました…唇も…首筋も……全部、熱くて……私は、おかしい、ですか?」
「おかしくなんか…ねえ。俺だって…苦しくて、たまんねえんだよ」