あなたに映る花


震える指が、私の涙を掬い取った。

夜色の瞳は、頼りないほど揺れていて。

いつもの強さは消えていた。


「景……景………」

私の名前を呼ぶ声は、か細く震えている。


抱きしめる腕は先程の力強さを忘れるほど柔らかく、壊れ物を扱うように私を包みこんだ。


「離したくない…他の野郎の物になるなんて、許さねえ…攫っちまいたいくらいだ…けど」

わかっている。

どれだけ強く思っていてもどれだけ一緒にいたくても、身分は変えられない。


「私が、この前の娘さんのように、身分が低ければ…よかったのに…」

震えながら呟くと、弓鶴様は少しだけ身を離し、私をじっと見つめる。

その、弱さを一切取り払った凛とした輝きは、背筋に戦慄を走らせた。

「一月、待て」

しっかりとした声音。

「俺は、もってる全部を捨ててもお前の傍に立つ。…お前には何も捨てさせねえ」

その言葉に込められた熱に、身体が疼く。

「…弓鶴様にそこまでしていただけるほど、私は価値のある人間じゃないです」

「お前にとってそうでも、俺にとっちゃ値段がつかねえほどの宝なんだよ」


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