あなたに映る花

暖かい言葉は、私の心に染みていった。

「待ちます…一月でも二月でも待ちます…」

そう囁くと、フッと弓鶴様が口角を上げる。

「お前は気が長いみてえだが、生憎俺は短気なんだ。そんなに会えなかったら俺の方がおかしくなる。最悪、無理矢理にでも攫ってやるよ」

その不敵な笑みと豪胆な物言いに、思わず笑いが零れた。

「はい。その時はよろしくお願いしますね」

「おう。任せとけ」

まるで引っ越しの手伝いを頼むみたいな軽い空気に、私達は目を合わせて笑いあった。












「……弓鶴君。ニヤついて気持ち悪いんだけど」

「あ?なんか言ったか?」

「…こりゃ聞くだけ無駄か…」

「何言ってんだ?それより夕霧とお前、明日から与力な」

「………ねえ、浮かれ過ぎて頭おかしくなったの?景ちゃんといちゃついてきて満足したのはわかるけど、無責任な発言は控えてよ」

「意識も頭もはっきりしてるぜ。俺はしばらく戻らねえから変わりやっとけ」

「え、何それ」

「頼んだぞ。じゃあな」

「弓鶴君!…ってあれ、もういないし」

「和陽?どうかしたか」

「ああ、暁野君。実はさ――」


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