あなたに映る花
「姫様!どちらにおいでですか!」
「ここよ、凛」
回廊に響く声に、私は庭から返事をした。
凛は慌てたように駆け寄ってくる。
「姫様…また、それですか…」
呆れた視線に少し身を竦めた。
「…し、仕方ないです…嬉しいんです…」
――弓鶴様から貰った振り袖。
蒼に散る桜をそっと撫でる。
その美しさにうっとりしていると、凛にひょいと取り上げられてしまった。
「凛!返して下さい!」
すると凛は、だいぶイラッとした目で私を睨む。
「旦那様がお呼びです!橘様との婚姻の話でしょうから浮かれないで、むしろ沈んで行ってください!」
…………。
「忘れてた…」
「じゃ思い出して覚悟決めて下さい」
「いやです~…」
「…さっさと行きなさい!」
駄々をこねたけど、凛に容赦なく追い出された。