あなたに映る花
「…父上。お呼びでごさいますか」
「来たか、景。こちらへ」
父・邦西(ほうざい)に手招きされ、すすすすと近寄る。
…あんまり聞きたくないけど、さっさと終わらせてしまおう。
「父上。何用でございましょうか」
単刀直入に聞くと、父上はそれはそれは嬉しそうな顔をした。
「実はだな。お前の婚姻についてだが―」
……来た。
私は強く目を閉じる。
「――取りやめになった」
……耳を疑う。
今、父上はなんと言ったの?
「婚姻が、取りやめ…?」
おうむ返しに聞くと、父上は深く頷いた。
「おお。橘様との婚姻は取りやめた」
――よかった。
一気に気が抜ける。
ホッと息をつくと、再び父上が口を開いた。
「いくらなんでも歳の差がありすぎる。お前が可哀相だし、それに……もっと良い話が来ているのだ」
ピシッ。
身体が固まる。
「…良、い…話…」
「そうだとも」
父上は何を勘違いしたのか満足げな表情で私を見た。