あなたに映る花
「相手は姫様と歳も近くて才もあり、跡継ぎの有力候補、巷では大変な美形と噂の徳川通直様が姫様を、ですか……ま、侍女の私からしてみれば、手塩にかけた姫様が良い方に嫁ぐのは嬉しいことこの上ないですけど…姫様、未練たらたらですからねえ」
「うぅ~…」
目に涙を溜める私の背中を、凛は優しくさすってくれた。
「大丈夫ですよ。斎藤様は一月待てば一緒に居られると約束されたのでしょ?だったら信じて待つのが一番です」
いつものはきはきとした言葉とは違う優しい声に 、私は徐々に落ち着きを取り戻す。
「斎藤様がくるまで、私が姫様を守りますから。どうか、信じてください。自分に向けられる思いを」
――なんて、格好よいのだろう。
「ありがとう、凛…」
凛の袖をギュッと掴んだ。
凛はニコッと笑い返してくれる。
「何言ってるんですか。姫様は私の大切な話し相手です」
「…側に、いてくださいね…?」
袖を握っていた右手をそっと外され、凛の大きめの両手で包まれた。
「…もちろんです。誰が大事な姫様を悲しませたりするもんですか」