あなたに映る花
「とっ……」
床入り!?
「どういうことですか!?」
「…やっぱり覚えてないですよね。姫様、三日前の夜に気を失ったんです」
………?
首を傾げると、凛は悲痛な顔で囁いてきた。
「……斎藤弓鶴様の訃報をお聞きになった時です」
「―――っ!」
思い出した途端、雪崩みたいに弓鶴様への思いが押し寄せてくる。
また遠くなりそうな意識を必死で掴んだ。
凛が震える私の手をさすってくれる。
「大丈夫ですか?」
声を出せなくて、微かに首を動かすことしかできなかった。
「……斎藤様のことを聞いた後、気がついた姫様は魂が抜けたように虚な目で何の反応も示しませんでした」
凛は、その時の状況を細かく教えてくれる。
「迎えも来ちゃいましたし、無意識に動くことはできるみたいだったので、そのまま婚儀を挙げちゃったんです」
…あ、挙げちゃった、って……
「…では、私はもう徳川通直様の側室になってしまったのですね…」
「正確にはこれから夫婦の営みをするんですけどね」
「……嫌です……」
弓鶴様以外の男性に触れられるなんて。