あなたに映る花
「―今、良太先輩がおっしゃられたことも含めてですが、私はよく『女のよう』と言われます」
「それは自分がいいましたねー…でも、男なんでしょ?」
「そうですね。確かに男です」
景くんはクッと拳を握った。
「……体は、ですが」
………えっ…?
それ…って、つまり…
「『性同一性障害』って…コト?」
景くんは肯定も否定もせず、あたしの目をじっと見た。
「世間的には、そうなります。ですが、私の場合少し違うんです」
「…どういう意味だよ?」
良太が眉尻を下げて言う。
「男としての『自我』が目覚める前に、女としての自我…正確には『記憶』が目覚めた、というほうが正しいでしょう」