あなたに映る花
「できれば止めさせたいですけど…無理な相談です」
頬に手を当てて呟く凛にがっくりと肩を落とすと、凛が気分を変えるように疑問を口にしてきた。
「そういえば、なんで姫様はお目覚めになられたのですか?」
「…それは……何か、物凄い音が聞こえて……」
「凄い音?どんな感じですか?」
「…それは――」
バアン!!!
「うわああああ「キャアアアアァ」ぁぁぁ」
「――こんな感じの音です」
外から鼓膜が破けそうな音が響いてくる。
部屋の前にいた城仕えの者達はどこかへ逃げてしまったようだ。
「…な…何が怒っているのですか!」
「知りませんよおぉぉ」
凛と二人、肩を寄せ合っていると、襖の前に人影が膝をつく。
「申し上げます!」
彼は襖越しに声を張り上げた。
「つい先程、屋敷内にくせ者が入り込みました!徳川通直様は心ノ臓を撃たれ、ご崩御なされた模様!せめて奥方様はお逃げ下さい!」
男は一方的にまくし立て、足早に去って行ってしまった。
「…心ノ、臓を…!」
なんて恐ろしい…!
凛が私の手を取る。
「逃げましょう、姫様!通直様には特に恩もないですし、命が優先です!」
凛の言葉につられ立ち上がりかけた、その時。
―――――フッ。
部屋を照らしていた明かりが消えた。