あなたに映る花
「えっ?」
突然真っ暗になる部屋の中。
私の手を握る凛の手に力が篭る。
「どうしましょう!どこが出口かわかりません…」
凛の焦った声に、あまり得意ではない暗闇。
私の中の不安が大きくなっていった。
だ、誰か助けて…
「おい!無事か!」
唐突に部屋の襖がスパンと開け放たれた。
中に入って来たのは、暗くてよく見えないが男性であろう人影。
「だっ、誰ですか!?」
凛が私を背に回し、もうめちゃくちゃな感情の入り混じった声で怒鳴る。
けれど人影は動じることなく私達の前に膝をつくと、低い声で囁いた。
「さっきの音が、聞こえているだろう。――あれは銃声だ」
「じゅっ…」
―――銃声!?
驚いて声もでない。
彼はそんな私をじっと見つめると、詰めていた息をふっと吐き出した。
「とにかくここは危険だ。徳川通直が死んだ今、お前が残る必要はない」
――徳川様が、亡くなった今。
私がここにいる必要はない………