あなたに映る花
「行くぞ」
――けれど、私は。
「…すみません。私が手を取るのは、たった一人の方と決めているので…しっかりついて行きますから、大丈夫です」
………気分を害すのは、わかっていること。
怒鳴られるのを覚悟し、ギュッと目を閉じた。
だが………
「――そうか」
男の人はただそう言って手を引っ込めた。
予想外の行動に、私は思わず問い掛ける。
「……怒らないんですか?」
すると彼は何故か楽しそうに言い返してきた。
「惚れた男以外の手を取らない一途さのどこを怒る必要がある?」
「…え……」
「ほら、さっさと行くぞ。遅れるな」
……その頼もしい物言いは、どこかあの人を彷彿とさせる。
「はい!」
――そして私達は、城の隠し通路を通って外へと脱出したのだった。