あなたに映る花
――走り続けて、気が遠くなりそうなくらい疲れた頃。
雲が月を隠し、ここがどこかもわからない。
そんな中、不意に前を走っていた男が足を止めた。
「――着いたぞ」
「え…?」
もう上手く動かない首を無理矢理動かし前を見る。
そこにあったのは、下手な端本や大名よりしっかりとしたお屋敷。
「ここは……?」
「……」
男は何も言わず、さっと戸を開けると中へ入っていった。
私と凛も後を追って中に入ると―――
「やあ。よく来たね、景ちゃん」
この、声は………!
「―――間宮、様?」
特徴的な琥珀の瞳に楽しそうな笑み。
一ヶ月間、会っていなかったせいだろうか。
今はその存在がとても頼もしく感じた。
更に、その横には――
「…無事、なようだな」
「夕霧様…!」
赤茶の瞳に凛と同じような夕日を被せたみたいな髪。
間宮様が一歩前に出る。
そして、男に声を掛けた。