あなたに映る花
「そのような、こと……」
呆然とする私を背にし、凛が声を荒げる。
「そこまでしてまで姫様を手に入れようとするなど!!この外道!!」
――パンッ!
小気味よい音が響いた。
「……っ!」
噴怒の表情の夕霧様と、頬を押さえる凛。
……夕霧様が……
凛を、殴った……?
我を忘れたような怒りの瞳に、私は精一杯の声を出した。
「夕霧様ッ!」
「―――!?」
はっとして我に変える夕霧様。
頬を押さえて睨む凛を見ると、驚きと後悔の入り混じった顔で手を伸ばす。
「す――すまなかった。考えるより先に、体が動いてしまって……!」
だけど、凛はその手を払った。
「さっ、触るな!この人殺し!」
夕霧様は払われた手をしばらくじっと見つめると、やがてゆっくり下ろす。
「……はやとちりをするな。先程言ったことを覚えていないのか」
嫌に冷静な態度に、凛が声を震わせる。
「な…何のことよ…」
…今まで私達を黙って見ていた間宮様が、可笑しそうにしながら呟く。
「…今回のことは、君を連れ去るだけが目的じゃない。さっき言ったでしょ?『弓鶴君が解放される』――って」