あなたに映る花

「親父にも掛け合ったんだ。だが外様の娘じゃ身分が釣りあわない上に、正室になる女は公家の何とかって姫だと決められてた。…公家の娘じゃ蔑ろには出来ねえ。側室にしたところで大事に出来ないんじゃ、お前を泣かせるだけだ。だから…」

弓鶴様は間宮様と夕霧様を見て苦笑する。

「まず出島から拳銃を取り寄せた。それで、お前が嫁いでくる日に合わせてこっちも計画を立てた。……まあ、間宮の馬鹿が勝手に俺を殺したのは想定外だったが」

ギラッと目を光らせる弓鶴様にも、間宮様は笑みを崩さない。

「だってあのままじゃ、弓鶴君が約束破ったことになるじゃない。期限は一月だったんでしょ?」

「……まあな」

渋々頷いた弓鶴様は、気持ちを切り替えるように咳ばらいをした。

「……まあ、そんなわけで、間宮には銃を発砲してもらった。一発目は俺に、二発目はお前の部屋の前に。まずお前の周りから人を払わなきゃならなかったからな。俺の方は…」

弓鶴様が話しながらそっと寝間着に手を掛け、内側から真っ赤な紙の塊を二つ取り出す。

「袋状にしたこいつの中に血と同じくらいの質感の赤い染料を入れて、体に括りつけておいたんだ。血はそんなに水っぽくねえから袋からあまり漏れ出なかったし、間宮の発砲音に周りの奴らが気を取られてる内に二つとも叩き破った」


< 161 / 168 >

この作品をシェア

pagetop