あなたに映る花
「知ってるさ。俺だってお前を責めたりしてないだろ」
「そ、それは弓鶴様がお優しいから…」
罪悪感に乗っ取られている私は、必死で食い下がった。
すると弓鶴様が呆れたように私を見る。
「お前なあ。もし間宮辺りとこんなことになったら、俺は野郎を野良犬の餌にするぞ」
「うわ、酷いな弓鶴君」
間宮様が唇を尖らせるけど、弓鶴様は気にもとめない様子で続けた。
「お前を手に入れるなら代償が必要だ。物を買うときに金が要るように。だから俺は徳川を捨てた。それだけのことだ」
「…っ…そんなの、納得いきません!」
「…お前、なんでそこまで頑固なんだよ。じゃあお前も選べ」
何を、とは言わなかった。
弓鶴様の瞳だけが雄弁に語る。
――弓鶴様を取るか、家を取るか――
今戻れば、まだ姫に戻れる。
………でも、答えなんか必要ない。
それくらい、私は弓鶴様を――
「選びます。私は、貴方を。貴方は、私を」