あなたに映る花


私は姫を捨てる。

それが弓鶴様の傍に居る為の対価なら――





「……弓鶴様?」


突然目の前から弓鶴様が消えた。

「あ゙あ~っ!よかった~…」

いつも上から聞こえる声が何故か下から……。


目線を下げると、へたりこんでいる弓鶴様。

さっきの雰囲気はどこへやら、すっかり気の抜けた様子で息をついている。

「ど、どうかなさいましたか!?」

「いや…はぁ、よかった…俺……」

弓鶴様は何故か「よかった」を連発する。

何がよかったのだろう。


怪訝に思っていると、向こうから間宮様が歩み寄ってきた。

彼は弓鶴様の肩をぽんと叩く。

「お疲れ様。よかったね、いい返事もらえて。けど、へばるのはまだ早いよ?ちゃんと伝えないと」

「………ちっ」

間宮様の意味深な言葉に、弓鶴様が軽く舌打ちをする。

そして立ち上がると、再び私の手を握った。


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