あなたに映る花
だけど美香先輩は、ひらひらと手を振った。
「違う違う!…実はさ、いい本見つけ――」
「却下」
マナ先輩がバッサリ切った。
なんでだろう? 小説だったらいつもの無茶苦茶な美香先輩の脚本やらずに済むのに。
「あんたの持ってくる小説は、官能小説でしょうがっ!」
……そうでした。
あたしは、去年の文化祭を思い出す。
あの時も美香先輩は、官能小説を台本に使ってきたのだ。
ずぼらなあたしら三人と違い、台本を必ず一通りじっくり読み込む先輩二人が上手く組み込まれた18禁の伏線に気づいて、別の脚本書いてきてくれたからよかったものの…。危うく演劇部が廃部になるところだった。
良太と拓真を見ると、二人とも首を振っている。
「いくらなんでも駄目っすよ姐さん…」
「そんなの確実に廃部への道を辿ってるじゃないですかー」
男二人の言葉に、美香先輩がムッとした。
「違うわよ!」
「なにが?」
マナ先輩の呆れたような問いに、美香先輩は苛立ちをふくんだ声で返した。
「今回は違うの!官能小説なんかじゃない、本物の小説よ!」