あなたに映る花
「景ちゃん」
「…?なんでしょう?」
景くんより美香先輩の方が背が高いから、景くんが見上げる形になる。
美香先輩が、景くんの頬をそっと包み込んだ。
「もしあの本に決まったら……貴女、ヒロインやらない?」
景くんが目を丸くする。
「……え……」
「勿論、イヤだったらいいの。だけど貴女…女の子、でしょう?貴女のような顔立ちや体型なら女装しても全然大丈夫だし、何よりキャラがピッタリなのよ」
景くんの両手に美香先輩の手が重なった。
「イヤじゃなきゃ、アタシは是非貴女にやって欲しいの…!」
美香先輩の眼差しと気迫に、あたし達はゾクッとする。
本気だ。
美香先輩は、本気だ。
景くんの瞳が、一瞬だけど切なげに揺れた。
そして、小さく呟く。
「…私で…役不足でなければ………やらせて、下さい」
その言葉と真っ直ぐな目に、美香先輩が大きく頷いた。