あなたに映る花
景くんは、不安そうに聞く。
――ううん、不安じゃない。
怯えてるんだ。
何に?
……初めての役が主役だから、かな。
景くんを吹き飛ばすような勢いで、美香先輩が頷く。
「何言ってんのよ!だってこの役、悲しんだことなんかないんじゃね?っていうマナじゃ無理だし(どういう意味よ!!)大恋愛したことない佑じゃ難しいし」
……ヒドッ!
確かにあたしは恋したことないし、ものすごい不幸なことがあったわけじゃないけど…。
あたしはちらっと景くんを見る。
景くんは申し訳なさそうに眉を潜めていた。
…美香先輩が言わなくても、この役は景くんにしか出来ないのかもしれない。
この本の主人公の景姫は、まるで景くんを書いたみたい。
華奢な身体に大きな瞳、勇ましいところもあり、恋人を一途に思う健気さも……………
……恋人?
景くんにいたっけ?