あなたに映る花
マナ先輩が慌てて取り繕う。
「大丈夫よ!きちんと事情を説明すれば分かってくれそうな子を選んでくるから!」
「あ、いえ…そういうことじゃないんです。私はマナ先輩も美香先輩も信じているので、人選に間違いはないと思います。ただ…」
景くんはそこで言葉を切り、短く息をつくと、ゆっくりと続けた。
「…もし…仮に…万が一…私の想像が、現実になった場合…私は、役を演じられるかわかりません」
「…それは、どういう意味?」
マナ先輩の声音に、少し不安そうな色が混じった。
「万が一…それ以下の確率です。この学校にいるとは限らないし、日本にいるとも限らない。生きているかさえわかりません…でも、可能性は捨て切れないんです。私は、彼がどんな姿でいくつなのか、私のように体と心がすれ違っているかもしれないし、全く別の人間になっているかも知れませんから、どういう人かを説明することはできません。けど…もしお二方が選んできた人が、私の思う方なら…」
景くんが、今度はきっぱりと言った。
「私は、景姫役を演じることはできません」