あなたに映る花
「…彼…?」
「僕の言った『心に決めた男の人』?」
誠二先輩の言葉に、景くんは俯く。
それが何よりの答えだった。
「会いたく、ないの?」
あたしが聞くと、景くんは小さく答えてくれる。
「…会うわけには、いきません。また苦しませてしまうから…」
「さっきからさ、また、とか、生きているとかいないとか…まるでその人と君が過去になにかあって、その人が行方不明みたいじゃね?」
「みたいってか、そうなんじゃないのー?」
突然、いままでずっと黙っていた良太と拓真がやけに冷めた声で横槍をいれてきた。
「…どしたの二人とも」
あたしが訝しがると、良太が景を見る。
その視線が刺々しい。
「…なんで実力もないこいつが、主役なんすか」
良太の低い声に、マナ先輩が眉を潜めた。
「なにが言いたいの?良太」
「相手役にしたって、剣道部から連れてくるどこの誰とも知れない野郎にやらせるなんて…本気で言ってんすか?」
「だ、だから、何を…」
「良太が言いたいのは」
マナ先輩のセリフを、拓真が遮った。
「なんで稽古も積まず、出られるかわからないなんて曖昧なこと言ってるやつを、雰囲気が似てるってだけで主役に駆り立ててんだ、って言いたいんですよー…」